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RECORD ROOM

記録 01 ── 証拠その証拠は、たぶん証拠になりません。

スマホを見て、写真を撮って、レシートを集めて、それで「証拠を押さえた」と思う人がとても多い。けれど、その大半は、裁判では一枚の紙にもなりません。何が強く、何が弱いのか。そして集める過程で、なぜ自分のほうが追い詰められるのか。順番に書きます。

裁判で問われているのは、たった一つだけ

不倫の話になると、人は「どれだけ親密だったか」を証明しようとします。頻繁に会っていた。毎日連絡していた。旅行に行った。プレゼントを買っていた。

けれど、慰謝料の請求で問題になるのは、そこではありません。問われているのは「肉体関係があったと言えるか」という一点です。法律用語では不貞行為と呼びます。

親密さをいくら積み上げても、それは不貞の証明にはならない。
逆に、たった一枚の写真で決まることがある。

この基準を知らないまま集めると、何十枚のスクリーンショットを持っていても、話が前に進みません。「仲が良かったのは認めるが、そういう関係ではない」と言われて、そこで止まります。

証拠にならないもの

① 避妊具

持っていることと、使ったことは別です。バッグから出てきても、それ自体は何も証明しません。多くの人が「決定的」だと思って写真に撮りますが、単体では弱い部類に入ります。

② 腕を組んでいる写真、二人で食事をしている写真

「仲が良さそう」以上のことは伝わりません。同僚だ、友人だ、と言われれば終わります。
ただし——同じ日付のホテルの明細や、その前後のやりとりと重ねた瞬間、この写真は急に強くなります。単体では弱く、束になると効く。証拠にはそういう性質があります。

③ 「好き」「会いたい」だけのメッセージ

気持ちの表明にすぎません。関係の存在を推測させはしますが、それだけで肉体関係が認定されることは、まずありません。

強いのは、この3つだけ

種類なぜ強いのか
ホテルへの出入りが分かる写真・映像「入って、一定の時間が経って、出てきた」という事実が、そのまま推認につながる。滞在時間が記録されていればさらに強い
本人が認めた録音・書面本人の言葉は、あとから覆すのが難しい。謝罪文、メッセージでの謝罪、会話の録音
関係そのものを示すやりとり行為をうかがわせる具体的な内容。「好き」ではなく、事実に触れているもの

そして、これらを補強するものとして、宿泊費や交通の記録、行動の履歴、日付をつけたメモが効いてきます。補強材料は、それ単体では勝負になりませんが、強い証拠の説得力を何倍にもします。

ここからが本題です。集め方で、立場が逆転する

証拠を集めようとした人が、逆に責められる側になることがあります。これは珍しい話ではありません。

① 相手のスマホを、パスワードを破って開く

「夫婦なんだから」と思う人が多いところです。けれど、ロックを解除して他人のアカウントに入り込む行為は、法律に触れる可能性があります。特にSNSやメールのアカウントに無断でログインした場合、不正アクセス禁止法の問題になり得ます。

② GPSを取り付ける ── ここは2021年に法律が変わりました

改正ストーカー規制法(2021年8月26日施行)
相手の承諾を得ずに、GPS機器などの位置情報を取得する行為、およびそうした機器を取り付ける行為が、規制の対象に加えられました。ストーカー行為として立件された場合の罰則は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金です。

「車に一つ付けておくだけ」が、以前とは意味が変わっています。ここを知らずに手を出す人が、いまだに多いところです。

③ 画像を加工する

顔を隠そうとしてモザイクをかける。長すぎるからと一部を切る。善意でやったことでも、加工した瞬間、それは「元のまま」ではなくなります。提出したときに「手を入れたものではないか」と言われれば、そこで信用が落ちます。原本は、原本のまま残しておくこと。

④ 相手に見せる

いちばん多く、いちばん取り返しがつかない失敗です。
見せた瞬間、相手には準備の時間が生まれます。消される。口裏を合わせられる。説明を用意される。そして——警戒された相手からは、二度と同じ証拠は出てきません。

よくある誤解 ──「違法に集めた証拠は無効になる」は、正確ではありません

ここは正確に書きます。刑事事件と民事事件では、扱いが違います。

離婚や慰謝料の請求は民事です。民事の裁判では、集め方に問題があったというだけで証拠が門前払いされるわけではなく、著しく反社会的な手段で、人格権を侵害して得られたような場合に限って、証拠として使えないと判断される——というのが、裁判例の積み重ねから見えている考え方です。刑事に比べれば、かなり緩い基準です。

つまり、本当のリスクは「証拠が無駄になること」ではありません。
集めた自分のほうが、法に触れる側に回ることです。

証拠は使えたけれど、その過程で自分が訴えられた。慰謝料を請求するはずが、相殺されて終わった。この形がいちばん苦いところです。
※どこからが「著しく反社会的」にあたるかは、事案ごとの判断です。個別の判断は弁護士に確認してください。当サイトでは答えられません。

時間には、期限があります

慰謝料を請求できる期間には限りがあります。一般に、不倫の事実と相手方を知ったときから3年で時効にかかると説明されます(民法724条)。

そしてもう一つ、法律とは関係のない期限があります。
生活のパターンが変わると、証拠は取れなくなります。異動、引っ越し、相手の警戒。「決まった曜日の、決まった時間に、決まった場所へ行く」という規則性が崩れた時点で、押さえるのは急に難しくなります。悩んでいる時間は、静かにこの期限を削っています。

結局のところ、素人が踏み込める範囲は狭い

ここまでを一枚にまとめると、こうなります。

この5つを同時に満たしながら、自分の手で決定的な一枚を押さえる。それが現実的かどうかは、ご自身で判断してください。

もし本気で証拠を残す必要があるなら、次に確かめるべきは「いくらかかるか」です。

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